ビルマの竪琴の風景 Ⅱ

~あらすじ~
ミャンマー・ラカイン州の州都であるシットウェからヤンゴンを目指す。23時間でヤンゴンに着く予定だが果たして

鬱蒼とした密林へ、日がだんだんと傾き始める。窓ガラスというフィルターを通してなお鮮やかな陽光が最後の力を振り絞るように、発光する。

僕の乗ったバスは山間地を走っていた。道幅は狭く、道路状況も悪い。2台のバスがすれ違おうものなら、1台は山肌ギリギリまで寄らなければならない。日が落ちきる前に、この危険な道を通り抜けようとバスはますますエンジン音を高める。
山道の中腹でバスが突然、止まった。ぞろぞろと降りる乗客に続いて、僕もバスを降りた。
「変なところで休憩だな」
林に向かって立ち小便をしていると、20歳くらいの青年が流暢な英語で話しかけてきた。
「中国人かい?」
彼はミャウーでガイドをしていて、ヤンゴンに暮らす兄姉を尋ねにいくのだという。髭が薄いこともあって、20歳くらいに見えたが、実際には27歳だった。

「この休憩はいつまでなの?」と僕は尋ねた。
「バスが直るまでだね。エンジンがダメになっちゃったらしいよ」
僕は驚愕して聞いて、彼の言葉を反芻した。
「心配しなくて良いよ。ミャンマーではよくあることだから」
彼は笑顔で言った。そういわれると山中でのバス故障くらい大したことでは無いように思える。

3,4人の男がエンジンに水をかけたり、機械部分をいじったりしている。乗客は悠長に、その様を見つめている。
2時間の後にエンジンは再び、ゆっくりと動き出した。街灯一つない、夜の闇をバスは突き破っていく。乗客の大半は眠って、バス内は静寂が支配している。バスが土道を駆けていく音だけが単調に響いている。

翌朝8時にバスはヤンゴン郊外のバスステーションに着いた。僕は、休憩の時に知り合った彼と共にタクシーを雇って街中に向かった。

信号待ちの時に日本語のこんな音声が聞こえた。
「左へ曲がります。ご注意ください」
日本製のバスがヤンゴンの街で走っている。
大使館通りのすぐ近くに彼の兄姉の家があった。集合住宅のような所で、壁面は灰色にくすんで廃墟のような佇まいを見せた。

彼が窓を開けて、笑顔で遠くに向かって叫んだ。視線の先には、彼の姉の笑顔で手を振る姿があった。
僕は二週間前に泊まったホステルへと戻ってきた。

オーナーに「Do you remember me?」と聞くと、「Of course」と彼は言って、ハグをした。
「本当に良かった。生きて帰ってきたんだね」
前回、泊まったドミトリーに再び、割り振られた。二週間前にいた放浪者風の青年がまだ宿泊していた。
「お前、まだいたの?」
古めいたホステルに故郷に帰ったような気持ちを感じた。バスの疲れを癒やすように、僕は安心感を抱いて長い眠りについた。

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