「La vie c’est magnifique」

~あらすじ~

ベトナムからラオスまで一緒に旅をしてきたフランス人のエティーン君。およそ20日間の二人の旅は終わろうとしていた。

いつもと同じようにエティーン君が僕よりも早く起きた。朝食は「フレンチトースト」だった。荷物をまとめて、エティーン君はチェックアウトした。

トゥクトゥクを捕まえて、郊外にある空港に向かった。

「今度は男じゃなくて、女の子と旅をしたいよ」

僕は冗談を言った。エティーン君は笑った。トゥクトゥクが空港に着いた。

航空券を発券して、カウンターに座った。珍しく二人はあまり話さなかった。

アナウンスが鳴って、出発の1時間前であることを告げた。

「そろそろ行かなくちゃ」

エティーン君は立ち上がった。

「またすぐに会えるよ。その日まで」

エティーン君の声は震えていた。

「キルギスタンに着いたら、連絡してね」

僕の声も震えていた。

「それじゃあ。See you again 」

エティーン君はハグをしてきた。その力は思いの外、強かった。

空港を出て、歩いて市街地に帰った。なんだかビエンチャンの街がつまらなく感じた。もうこの街を出ることにした。

ホステルに帰り、チェックアウトした。スタッフが親切で既払い分のその日の宿泊代を返金してくれた。

バス停に向かい、停まっていたバスに飛び乗った。バスは友好橋を渡り、ラオスとタイの国境を越えた。タイを出国しておよそ一ヶ月。カンボジア➡ベトナム➡ラオスを経て再びタイに戻ってきた。

午後4時、タイ側の街・ウドンターニに着いた。名前はヘンテコだがなかなか大きな街だった。やはりタイは東南アジアではかなり発展している国なのだと思い知らされる。

デパートの4階にある銀行で5000円をタイパーツに換えてバス停に戻った。そしてチェンマイに行くバスに乗った。

5時半にウドンターニを出た。タイ北部の濃い密林に夕日が消えようとしていた。東南アジアでは見慣れたはずのナッツの木が、異国情緒を感じさせた。

翌朝5時、ランナー王朝の首都であったチェンマイに着いた。マップを確認するとバス停は市中心部から10キロ離れていた。空港が市街地から離れているのならば理解出来るが、バス停から市街地まで10キロも離れているのは理解できない。早朝なので街に向かう公営バスもない。

もちろんトゥクトゥクのおじさんが客引きをしていた。

初値は200パーツ(700円ほど)だった。こんなモノは吹っ掛けてくるのに決まっているので、80パーツ(250円ほど)と言ってみた。おじさんは理解出来ないといった風に首を振った。

「じゃあ170で乗せてやるよ」

「高いよ。じゃあ歩く」

たんかを切って歩きだした。おじさんが追いかけてくるだろうと思っていたのに、知らんぷりである。

10キロも歩くわけにはいかないので戻った。

「分かったよ。だけどもう少し値下げしてくれ」

結局、120パーツ(400円など)で話がまとまった。「ローカルプライス」とおじさんは言うが、高いのか安いのか見当がつかない。初めから値段を決めるか、メーターがあるならば良いのだが。

一度、話がまとまるとおじさんの態度が軟化する。禍根は残さない。市場で買ったという果物をくれた。

予約していた宿に着いた。宿泊手続きをする間、レストランを兼ねた共有スペー スで待たされた。

携帯を開くとエティーン君からメールが来ていた。

「I was happy we met and made such a great trip together.You are a great travel companion 」

二人で旅をした20日間を追憶した。ドローンを追いかけて木に登ったり、川に飛び込んだりしたコト。サパでモーターバイクに二人乗りで旅をしたコト。ホイアンで夜更けまで語り合いながら、分けあった「ビア ハノイ」の鉄っぽいテイスト。1つの記憶の糸が他の記憶を絡めて思い起こさせた。

「To tell the truth,while I am writing this email I am cring because it is difficult to leave you. I am sensitive person」

フエで別れても、国境で引き裂かれても再会することが出来た。だが、もう「again 」はないだろう。

I have share with you my feelings and I hope you will also do so」

僕の頬に暖かいモノが流れた。決壊したダムの水を止めなかった。ただ、この若い感傷を大切にしたいと願った。

ホステルのスタッフがミルクコーヒーを持ってきてくれた。泣いている外国人は怪訝に見えていただろう。

たまらずトイレにかけこんだ。エティーン君からのメールの最後はこんな文章が綴られていた。

「新しい友人を作っても僕のコトを忘れないでね」

忘れるはずがない。肝胆、相照らした友人を。

旅の初めの20日間は日本から共に来たY君という友人と楽しい時間を過ごした。次の20日間はエティーン君という人格者と終生、忘れ得ない旅をした。

僕の旅は残り20日である。どんな人と出会い、どんな旅をするのだろうか。期待が胸に萌芽した。

「La vie c’est magnifique(Life is beautifulの意)」

エティーン君が教えてくれた言葉をそっと呟いた。僕の旅はまだ続く。

第15話 「チェンマイでの休息」

https://dokushoplacecom.wordpress.com/2018/04/23/465/?preview=true

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