バンコクの夜

バンコクは昼と夜で顔が変わる。昼間はシャッターが目立つ通りも夜には繁華街となる。

写真家の瀬戸さんと日本食レストランで別れた後、僕たちはMさんという日本人に会った。Mさんは商用で長い間、バンコクに来ているそうだった。

そのMさんが夜のバンコクを案内してくれた。

集合場所はサラデーン駅近くのモンティエンホテルのロビー。僕たちが宿泊しているホステルの10倍以上はするだろう。シャムの兵隊のような服装をしたドアマンが立っている。

僕たちがソファーに沈みこんでいるとMさんがやってきた。

「さぁ行こうか。夜のバンコクへ」

街に出ると日本人の顔が異様に目につく。夜になると、涌いてくるのだろうか。おっさんが娘以上に歳の離れた女と腕を組んでホテルへ入っていく。

「日本人、多いですね」

僕がそう言うとMさんは

「見ておくんだよ。バンコクに来た日本人が何をしているのか」

呼び込みのタイ人も日本語で話しかけてくる。

「ソープランド好きですか?若い娘、多いネ」

「お兄さん、安いよ。見るだけタダ。3P,4P大丈夫」

ろくな日本語を知らない。

看板にも日本語が目立つ。日本人がオーナーをしている店もある。プラスチックの椅子に女の子を座らせて、次々にやってくる同胞を誘引している。

アソークという駅の近くはバンコクの中でも夜の店が密集していた。わけてもソイカウボーイという通りには50軒近く、並んでいた。

水着姿の女性が呼び込みをしている。微笑みの国とあって美人も多い。美人だと思って話してみると、声で男だと分かることもある。見た目では峻別つかない。

日本のように性に関して陰気な感じはない。

バカラというゴーゴーバーの店が有名なそうだった。客が中央で踊る女性を見ながらドリンクを注文する。気に入った女性を隣に座らせて、一緒に飲み、ホテルへいく。

その近くのテーメーカフェは日本の出会い喫茶のようなところ。売春婦が並んでいて、客は声を掛けて値段交渉している。

「足元を見てごらん。慣れている子はヒールを履いているけど、素人は運動靴の子もいるでしょ」

Mさんが言った。タイでは売春という仕事にそれほど線が無いように思えた。仕事帰りの女性や学生も多いそうだった。タイでは普通の家庭の子は中々、大学までは進めない。閉店直前のゴーゴーバーの前で勉強しながら呼び込みをしている少女も見た。

テーメーカフェに日本語が上手い子がいた。話をしてみると大学で日本語を専攻しているそうだった。日本にも来たことがあるらしく、京都の観光地で撮った写真を見せてくれた。その笑顔の少女が売春をしているとは思いたくなかった。その少女も最後はやはり「ホテルへ行こう。3000パーツでよいから」と言った。

僕は少女をそんな風に見たくなかったし、そんな風に見られたくなかった。けれどテーメーカフェに来ているのだから、そう思われるのは当たり前のことだった。むしろその気が無いのに話をした自分の方が道義に反している。

それでも、それでも何だかやるせない気持ちが募った。

少女は夜に汚されていく。

第3話 「カオサンにて」

https://dokushoplacecom.wordpress.com/2018/02/11/カオサンにて。/?preview=true

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