雨、ときどき晴れ

「どの店にしよか」
店頭に並ぶ魚の生臭さ。呼び込みをする大将の声。函館の朝市は観光客でごったかえしていた。
昨日、ライダーハウスで酒を酌み交わした人達と来ていた。3人いたおじさんの中の1人は二日酔いで動けなかった。一度、起きてまたいびきをかいていた。
「あんま観光客がいないところがエエな。地元の人が入るようなところが」
場末の食堂に入ったが、ここも観光客でいっぱいだった。海鮮丼の精算はおじさんがしてくれた。ありがたくご馳走になった。
おじさんと別れた僕は函館から一路、道央地方を目指した。遅くなってしまったがようやく北海道を走れるのだ。胸をときめかせて走り出したのだが10キロもしない内にパンクしてしまった。さすがにパンク修理にも慣れた。最初は一時間近くかかっていたが、今は20分ほどで出来るようになった。
走り出す。石が多く、デコボコな北海道の道は細いタイヤのロードバイクにとって走りやすいとはいえない。函館を出た時から空色は怪しかったが山岳地帯を走りだすころには、雨が降り始めた。見上げると雨空と晴れ空がある。不思議な天候の中、山岳地帯から海岸地帯に抜けた。

北海道 山

太平洋と駒ヶ岳のコントラストが北海道に来たのだと僕に強く感じさせた。そこから長万部まではひたすら平坦な道だった。長万部からは日本海側を目指して進んだ。
またパンクをした。その修理をしている内にすっかり日は暮れてしまった。近くの温泉施設に駆け込んだ。そこは併設のレストランで食事をすると、入湯料が無料になるという謎の仕組みだった。イカスミラーメンを食べて施設を出ると雨は本降りになっていた。雷鳴が轟いていて、稲妻は空を明るく照らした。
「パンッ」
突如として大きな音が鳴った。雷が落ちたのかと思ったが、何のことはない自転車のチューブが破裂しただけだった。パンク修理の時にチューブがねじれていたからであろう。この日、三度目のパンクだった。温泉で暖まった体はパンク修理の間にすっかり冷えてしまった。
黒松内という所にある牧場のライダーハウスで宿泊することになった。その日の客は僕だけだった。利益を出すことは考えていないのだろう宿泊料は500円だった。
毛布にくるまりながら泥のように眠った。

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