KAIKO MEMORIAL ASSOCIATION

「若くして旅をせざるものは 老いてのち何を語るや」 開高 健
この言葉に突き動かされるように旅に出た。開高という男は現代において最も過小評価されている作家の一人だと僕には思えてならない。
旅を愛し、酒を愛し、釣りを愛し。その豪快な生き方の裏にある緻密な思想、鬱になるほどの繊細な感性。シニカルな口調の中のユーモア。ベトナムの戦地からアマゾンの奥地までを飛び回る行動力。批判を恐れずに自分の信じた道を行く姿。
僕は開高という作家を書物や録音された講演記録を通してしか知ることができない。
昨日、その開高が暮らしていた茅ヶ崎の家を訪ねた。記念館になっていて直筆原稿などの資料が展示されていた。書斎も当時のままにされていた。掘りコタツに足を突っ込んで、猫背で原稿を書く姿が想像できる。
正確には覚えていないけれど開高はこんなことを書いていた。
「人間は過去には賢くなれるけど、現在や未来に対してはそうなれない」
青年期に終戦を迎え、それまでの倫理観や「正しさ」が180度転換してしまったからこそ生まれた考えであろう。彼は黒白の分かりやすい構図や特定のイデオロギーに囚われず、何が正しいのかを考え続けた。
「自分の目で見たことしか信じられへん」
そういう姿勢が彼にはあった。新聞も読まなかったしテレビニュースも見なかったらしい。歴史の現場に立ち、主体的に生きようとした。貪欲に探求することを恐れなかった。
一時間ほどで記念館を出た。
「無駄を恐れてはいけないし無駄を軽蔑してはいけない」
開高の言葉を背中に聞きながら無駄を愛する旅を再開した。

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