センチメンタル・ジャニー

同室の人が起きる音で目が覚めた。枕元のスマートフォンを手繰り寄せる。AM 6,00、まだ早い。次に起きると7時過ぎだった。大きく伸びをした。疲労はほとんどとれていた。
結局、昨晩もこのゲストハウスに泊まることになった。見ず知らずの人とも話ができるアットホームな雰囲気が心地よかったから。
初日にいたオーストラリア人とオランダ人は次の目的地へと向かっていったが代わりに高山から来た40過ぎの男性と、島根から来た大学生がいた。
高山から来た男性と0時過ぎまで色々な話をした。仕事のこと、趣味のこと、社会のこと。
「お金は使ったほうが良いよ。それが失敗であったとしても、経験や教訓として君の中に残るのだから」
朝御飯を食べていると、ほかの人たちも起き出して続々とリビングルームにやってきた。
そしてまた、お喋りが始まる。
そうこうしている内に「今日の朝、出発しよう」という決心が鈍り始めた。「もう一晩、いようかな」と思えてくる。
それでも出発しようと荷造りを始めた。こんなところで立ち止まっていてはいけなかった。
9時半にゲストハウスを出発した。リビングにいた人たちが門前まで見送ってくれた。

金沢の空は今日もどんよりと曇っていたが、心は晴れやかだった。

再び富山に入り一路、糸魚川を目指す。
富山の町はどこから四方を見渡しても山があった。雲を突き抜けて、屹立する山が立山であった。
高岡に入ると、街並みも少し都会のものへとなってくる。だが妙な違和感を覚えた。町を見てもスーパーに入っても若者がいなかった。ほとんどが老人であった。
高岡から富山市へと抜ける。次第に退屈な気持ちが募ってくる。日常の倦怠から抜け出すために旅に出たのに、その旅自体が倦怠なものへと変化している。
日が沈んでもまだ糸魚川までは40キロもあった。「国道」とはいっても、ほとんど街灯の無い小さな道をひたすらにペダルを漕いで進む。今日中に糸魚川に到着することは不可能だった。食事や野宿のできそうな所を探すが真っ暗な道が続くだけで何も見当たらない。
昨日や一昨日が賑やかだったために余計、孤独を感じる。民家からは光や笑い声が漏れる。ざばーんと風呂に入る音がする。
「行き先どころか今日、泊まるところさえないのだ」
荒涼な心に日本海からの冷たい風が吹き付ける。涙がポタポタと頬を伝う。見上げるとやはり星々が輝いていた。
「上を向いて歩こう 滲んだ星を数えて
泣きながら歩く ひとりぼっちの夜」

「上を向いて歩こう 作詞 永 六輔
作曲 中村 八大」

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